
- 『“それ”がいる森』はなぜここまで賛否を呼んだのか
- 作品情報
- 『“それ”がいる森』あらすじを詳しく解説
- “それ”の正体は宇宙人だった
- 『“それ”がいる森』最大の問題は「ジャンルのズレ」
- 実は『学校の怪談』系ジュブナイル映画に近い
- 『“それ”がいる森』は“期待値”で損をした映画だった
『“それ”がいる森』はなぜここまで賛否を呼んだのか
映画『“それ”がいる森』は、2022年に公開された中田秀夫監督作品である。
主演は相葉雅紀。
『リング』『仄暗い水の底から』を手掛けた中田秀夫監督による“本格Jホラー”として宣伝され、公開前から注目を集めていた。
しかし公開後、SNSやレビューサイトでは、
- 「思っていた映画と違う」
- 「宇宙人映画だった」
- 「途中から意味が分からなくなる」
- 「怖いというより困惑した」
という声が大量に投稿されることになる。
特に話題になったのが、“それ”の正体である。
本作の“それ”は、幽霊でも呪いでも怪異でもない。
まさかの宇宙人だった。
なぜ『“それ”がいる森』はここまで賛否を呼んだのか。
本記事では、あらすじをネタバレありで詳しく解説しながら、本作が「クソ映画」とまで言われた理由を掘り下げていく。
作品情報
作品名:『“それ”がいる森』
公開年:2022年
監督:中田秀夫
脚本:ブラジリィー・アン・山田、大石哲也
主演:相葉雅紀
主なキャスト:
・松本穂香
・上原剣心
・江口のりこ
・尾形貴弘
・宇野祥平
・眞島秀和
ジャンル:ホラー/SF/ミステリー
上映時間:107分
『“それ”がいる森』あらすじを詳しく解説
主人公・田中淳一は、かつて東京で義父の会社に勤めていた。
しかし義父と対立したことで会社を追われ、現在は福島県で一人ミカン農家を営んでいる。
妻と息子・一也とは別居状態だった。
そんな淳一のもとに、ある日突然、一也がやって来る。
一也は中学受験を強制され、母親から過度なプレッシャーを受けていた。大好きだったサッカーまで辞めさせられ、耐え切れなくなった一也は家出同然で父親の元へ逃げて来たのである。
淳一はしばらく一也を預かり、地元の学校へ転校させる。
転校先で一也は、祐志という少年と仲良くなる。
祐志は森の中に秘密基地を作っており、一也を“天源森”へ案内した。
そこで二人は、巨大な銀色の物体を目撃する。
しかしスマホの充電が切れていたため、写真は撮れなかった。
翌日、学校で話しても誰にも信じてもらえなかった二人は、証拠写真を撮るため再び森へ向かう。
だが森の中で、人間のような異形の怪物に遭遇。
祐志は怪物に襲われ、そのまま姿を消してしまう。
一也は気絶状態で発見されるが、何が起きたのか話そうとしない。
その後も、
- 森で発見される惨殺死体
- 子供の失踪事件
- 夜中の停電
- ビニールハウスを荒らす謎の存在
など異常事態が続発する。
やがて淳一自身も、人型の怪物を目撃。
さらに60年前にも同じ事件が起きていたことを知る。
当時の目撃者・児玉は、独自調査の末にある結論へ辿り着いていた。
怪物の正体は宇宙人。
UFOで森へ飛来し、子供をさらい、捕食しているというのである。
警察は信じないが、事件は悪化。
子供たちは学校へ避難させられる。
しかし夜になると、ついに宇宙人たちが学校を襲撃。
子供たちはパニックに陥る。
一也は捕まった友人を助けるため森へ向かい、そこで宇宙人が子供を捕食し、“分裂”する瞬間を目撃する。
淳一は、以前ビニールハウスで宇宙人が腐ったミカンを恐れていたことを思い出す。
実は、細菌感染したミカンが宇宙人の弱点だったのである。
淳一は腐敗したミカンの果汁を染み込ませた武器で宇宙人へ立ち向かう。
だが最後には巨大化した宇宙人に飲み込まれてしまう。
しかし淳一は、体内からナイフで宇宙人の腹を切り裂き、一也と共に脱出。
宇宙人たちはUFOで撤退し、一也は福島で新たな生活を始めるのだった。
“それ”の正体は宇宙人だった
本作最大の特徴は、“それ”の正体が幽霊ではなく宇宙人だった点である。
しかも宇宙人たちは、
- 子供を捕食する
- 分裂増殖する
- 人型クリーチャー
- UFOで移動する
という、かなり古典的なSFモンスター映画的設定になっている。
問題は、この設定自体ではない。
最大の問題は、“映画前半との噛み合わせ”だった。
『“それ”がいる森』最大の問題は「ジャンルのズレ」
本作の前半は、徹底してJホラー演出で構成されている。
- 薄暗い森
- 湿度の高い空気感
- 子供の失踪
- 不穏な間
- 見えてはいけない存在
など、『リング』『仄暗い水の底から』を連想させる演出が続く。
つまり観客は、
「これは幽霊か呪いの話だ」
と思いながら観ることになる。
ところが途中から突然、
- UFO
- 宇宙人
- 捕食
- 分裂増殖
- 学校襲撃
というB級SFパニック映画へ変貌する。
ここで観客の脳内ジャンル設定が崩壊する。
ホラー映画は、「何を怖がればいいか」が定まるほど怖くなる。
しかし『“それ”がいる森』は、途中でルールそのものが変わる。
その結果、恐怖よりも、
「え?宇宙人なの?」
という困惑が勝ってしまったのである。
中田秀夫監督作品として期待されたものとのズレ
本作がここまで酷評された理由には、“中田秀夫監督作品”だったことも大きく影響している。
中田秀夫監督の恐怖演出は、本来、
- 見せすぎない
- 説明しすぎない
- 空気で怖がらせる
タイプである。
『リング』の貞子も、完全に正体を説明し切らないからこそ怖かった。
しかし『“それ”がいる森』後半は真逆になる。
- UFOを見せる
- 宇宙人を見せる
- 分裂を説明する
- 弱点まで説明する
という、“説明型モンスター映画”になっていく。
つまり、
観客が期待した「見えない恐怖」と、
映画が実際にやりたかった「クリーチャーパニック」が噛み合っていなかった。
これこそ、本作最大の違和感だったのである。
実は『学校の怪談』系ジュブナイル映画に近い
ただし、本作を“Jホラー”として見ると事故るが、“90年代ジュブナイルSF”として見ると印象は変わる。
本作には、
- 森の秘密基地
- 子供だけが真実を知る
- 大人は信じない
- UFO
- 学校襲撃
- 少年の成長
という、『学校の怪談』や昔のキッズ向けオカルト映画に近い構造がある。
実際、終盤はかなり“少年冒険映画”寄りである。
そのため、本作は「怖いホラー」を期待するとズレるが、“B級ジュブナイルSF映画”として見ると意外と成立している。
問題は、その方向性を宣伝段階で隠していたことだった。
『“それ”がいる森』は“期待値”で損をした映画だった
『“それ”がいる森』は、決して完全な駄作ではない。
むしろ、
- Jホラー
- ジュブナイル
- UFO映画
- B級クリーチャー映画
を無理やり混ぜ合わせた、かなり珍しい作品である。
ただし、中田秀夫監督による“本格Jホラー”を期待して観た人ほど、強烈な違和感を覚える構造になっていた。
もし最初から、
「少年SFパニック映画」
として宣伝されていたなら、現在とは違う評価になっていた可能性は高い。
だからこそ本作は、「クソ映画」と言われながらも、今なお“なぜこんな映画になったのか”を語られ続けているのである。






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