
はじめに
カリフォルニアの荒野で馬の訓練牧場を営む兄妹が、上空に現れた“未知の存在”の正体を捉えようとする中で、見せ物としての映像、捕食と搾取、そして人間が「恐怖を見たがる本能」をテーマに描いていく。 “UFOのようでUFOではない存在”、過去のゴーディ猿事件との構造的なリンク、ショービジネスの裏側に潜む暴力など、寓話としても読み解ける要素が多く、公開以降は考察が盛り上がった。
あらすじ
ゴーディ事件の“前触れ”
物語の冒頭は、シットコム番組の収録スタジオで起きた「ゴーディ事件」から始まる。90年代、人気コメディ番組『ゴーディーズ・ホーム』で、チンパンジーのゴーディが突如暴走し、共演者を惨殺する。唯一、生き残った子役 リッキー “ジュープ” パク(スティーヴン・ユァン)は、机の下に隠れていたため助かった。この事件は本作全体に深く関わる“テーマの象徴”だが、ここでは理由も語られず“理解不能な暴力”として提示される。
父の死と、不可解な空の存在
舞台は現代へ。オーティス・ヘイウッド Sr.(OJの父)は、カリフォルニアの牧場で馬を使ったトレーニング会社「ヘイウッド牧場」を経営していたが、ある日、空から金属片やコイン、鍵などの“無数のガラクタ”が降ってくる。そのうち1枚のコインが父の頭に直撃し死亡。息子の OJ(ダニエル・カルーヤ)は、父の死因が「飛行機事故では説明できない」と気づく。同時に、牧場周辺では「上空で何かが高速で移動している」という奇妙な現象が起きていた。
エメラルドとOJ、そして「空飛ぶ何か」を撮る計画
経営難に陥った牧場を救うため、OJの妹 エメラルド(キキ・パーマー)はあるアイデアを出す。“UFO(オープ)を撮影し、“オプラ級”の価値ある映像を売ろう”。姉弟は、監視カメラ設置の専門店で働く アンジェル(ブランドン・ペレア)の協力を得て、牧場に監視システムを構築。しかし隣にある「ジュープの西部ショー施設」“ジュピターズ・クレーム”で、さらに奇妙な噂が流れていた。ジュープは牧場で起きている怪現象(上空の存在)に気づいている。そしてそれを利用し、自分の新しいショーの目玉にしようとしている。ジュープは「空の存在」を“調教可能な怪物”だと信じていた。
正体判明 ― UFOではなく「生物体」
OJはある夜、明確にそれを目撃する。円盤型の物体は高速で動き電気系統を停止させ馬を攻撃する。だが決定的に重要なのはここ。それは“宇宙船ではなく、宇宙生物そのもの(巨大な捕食動物)である”。中にエイリアンが乗っているのではなく、円盤そのものが“1匹の獣”だった。OJはその捕食行動から、「目を合わせなければ襲わない」と推測する。
ジュープの“惨劇”
ジュープは町の客を集め、見世物として“空の存在”を呼び寄せるショーを開催。だが彼の「調教できる」という思い込みは完全に誤りで、怪物はショーの観客全員を吸い込み、消化してしまう。ショー会場の上空には暗雲が渦巻き、悲鳴だけが地上に響く――これが本作屈指の地獄絵図となった。
怪物の名前 ― “ジーンジャケット”
OJたちはこの生物を “ジーンジャケット(JJ)” と名付け、捕食の癖を分析する。
・捕食前に電気を止める。
・生き物の目を直接見ると攻撃。
・形状を変化させる“折り紙のような生物”。
・動くものに反応し、縄張り意識が強い。
OJたちは、古典的な撮影監督 ホルスト(マイケル・ウィンコット)を呼び、フィルム撮影で決定的瞬間を狙う。
巨大生物との“知恵比べ”
ジーンジャケットは、ついに牧場を包囲し、襲撃してくる。
・エメラルド:電気オフのタイミングを読みながら、バイクと風船で怪物を誘導する。
・OJ:馬を使い、怪物の注意を引きつけ続け、妹を逃がすため決死の囮となる。
・アンジェル:破壊される家の中で必死に生き延びる。
・ホルスト:ジーンジャケットの“完璧な捕食姿勢”を撮るため、自分毎フィルムを捧げて死亡。
追い詰められたエメラルドは、遊園地の巨大なヘリウム風船「ジュープのマスコット」を空へあげ、ジーンジャケットを“誤飲”させる作戦に出る。
エメラルドが怪物を撃破
ジーンジャケットは巨大風船を飲み込んだ結果、内部から破裂し死亡。同時に、エメラルドはジュピターズ・クレームの古い写真機構が並ぶ「井戸カメラ」で、怪物が爆散する瞬間を“決定的写真”として収めることに成功。その直後、煙の向こうに、馬に乗り無傷で立つOJの姿がゆっくり現れる。エメラルドは涙を浮かべながら兄を見つめ、映画はそこで幕を閉じる。
考察
ジョーダン・ピール作品らしく、『NOPE』は“表向きは怪物映画だが、本質はテーマ映画”です。以下、主要テーマを整理する。
「見世物」と搾取の物語
本作の根幹テーマは人間は“見世物(スペクタクル)”に取り憑き、理解しないものを利用しようとする生き物であるということ。その犠牲となるのが、馬、ゴーディ、ジーンジャケット、ジュープ、そして人間社会そのもの。ジュープは子供時代の「ゴーディ事件」を“トラウマ”ではなく“語って売れるエピソード”として消化し、空の怪物までも見世物にしようとして破滅した。
ゴーディ事件は“人間の傲慢”の象徴
ゴーディが暴れた本当の理由は説明されない。だが、あれは「人間が自然をコントロールしようとした」「動物を商品として扱った」その結果、生物の本能が爆発した象徴。ジュープはこの事件を誤った形で理解し、「動物は自分を覚えていて、僕とは特別な関係がある」と勘違いしたまま大人になった。そして同じ過ちを「ジーンジャケット」で繰り返した。
ジーンジャケットは“自然そのもの”のメタファー
空の怪物は単なるUFOではなく、理解不能で、人間の尺度では測れない“自然の暴力そのもの”。人間のルールは通じない。予測できない。傷つけても終わらない。OJが馬の扱いを通じて“目を合わせない”という行動原理を見抜くのは、人間と自然との“敬意ある距離”を示している。
OJとエメラルドは「搾取からの解放者」
ヘイウッド家兄妹は、馬を搾取するハリウッドに抗い、動物や自然を「尊重」して向き合う人物として描かれる。彼らだけが怪物に勝った理由は、支配ではなく、理解しようとしたから。ジュープとは対照的な構造。
ラストのOJの登場は“西部劇ヒーロー”の再誕
エメラルドの視線の先に「JUSTICE(正義)」と書かれたゲートがあり、その奥に立つOJ。これは、黒人が西部劇の主人公になれなかった映画史への反転、ヘイウッド家は馬文化の祖という物語設定の回収、ホラージャンルにおける新しい英雄像 を象徴している。
おわりに
『NOPE』とは何の映画だったのか。一言で言うと、「理解できない自然をショーにしようとした人間が“NOPE”と言われ拒絶される映画」であり、ハリウッドの搾取構造を“怪物映画”の皮で包んだメタホラーでもある。それを 西部劇 × クリーチャー × コメディ × 社会風刺 として成立させるのがジョーダン・ピールの妙。
以上。
ブログランキング参加中!
1日1回ポチッと応援よろしくお願いします♪









![NOPE/ノープ 4K Ultra HD+ブルーレイ[4K ULTRA HD + Blu-ray] NOPE/ノープ 4K Ultra HD+ブルーレイ[4K ULTRA HD + Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/4142iGwi0PL._SL500_.jpg)

